学術顧問からのメッセージ

 

 

薬学博士山崎正利先生

薬学博士 山崎正利先生
帝京大学薬学部 名誉教授

 

研究/免疫・生体防御機構の解明、白血球の抗ガン機構、食品成分の免疫及び炎症の調節機構、免疫増強及び癌科学治療法の作用、海洋生物由来のバイオテクノロジーなど。また、大学院博士課程を指導。


現在の日本は、平均寿命や健康寿命は世界のトップクラスですし、国民皆保険制度を始めとして医療水準もトップクラスです。健康や医療に対する国民の意識もトップクラスと思いきや、驚くべきことに世界最低なのです。

様々な健康情報やサービスを調べ、理解し、効果的に利用する個人的能力の程度を意味する概念に「ヘルスリテラシ-(医療リテラシ-)」があります。医療・健康情報を効果的に利用し、健康の維持や増進に役立たせる能力を向上させるのに重要です。

最近のヘルスリテラシ-の国際調査(15カ国)によると、日本はなんと最低であることが分かりました。国民皆保険制度や高い医療水準に守られていることが、逆に個人のヘルスリテラシ-の低下につながっているのでしょうか。日々ヘルスリテラシ-を向上させることが、ますます重要だと思われます。 ヘルスリテラシ-向上の観点からも、ヘルバの良さを学び活用していくことは、とても大切だと感じています。

 

栄養学を超えた食理学(食品・栄養生理学)が必要になる

私達の願いである健康はたくわえて長期間保存しておくことが出来ません。健康は日々の財産であり、日々の戦いで勝ち取るものです。生きていくために毎日食べる飲食物から受ける影響はとても大きいことがわかっていただけると思います。

食物には6大栄養素とともに、非栄養素でも重要な成分がたくさんあります。現在の栄養学では食品の働きや成分のすべてが分かっているわけでは決してありません。これからは、栄養学を越えた食理学という考え方が必要です。自然の恵みを知り、それを活用して病気を防ぐことや改善にはとても大切なことだといえます。

 

予防に勝る治療なし!

医学は現在のように病気の診断・治療の枠組みだけに目を向けてはいけません。病気を予防して健康を保つという考え方が必要です。“予防に勝る治療はない”ことを誰もが自覚していなくてはなりません。

予防医学は、病気の診断治療のような対症療法と異なり、健康を保つための予防医学を実践するには、“智恵・知識と努力”がどうしても必要になってきます。

 

21世紀は「治療医学から予防医学へ!」

これから21世紀に向けて医学は治療医学(対症療法)から予防医学への大きな方向転換の時期に入ると思われます。

私は、もともと食品の研究ではなく、生命の仕組みを調べている基礎研究者です。命の仕組み、身体の細胞を研究している中で、細胞を慈しみ、育むことがいかに大切であるかを学んだのです。

私達の身体をつくってる60兆個の細胞も毎日健康に生きていく必要があるのです。それらは、私達が毎日食べている食品由来の成分に大きな影響を受けています。このことからも、食べ物又それに含まれている成分の重要性・予防医学の必要性が分かっていただけるものと思います。

”予防医学は研究と実践の二面性を備えた科学”でありますが、基礎研究や学問は実際に生かされてこそ輝きを増すものです。この信念のもと、これからも予防医学の実践と基礎研究をつづけていきたいと思います。

 

概略プロフィール

昭和46年東京大学薬学部卒業/51年同大学院卒業・薬学博士同大学助手、その後、米国国立がん研究所・客員研究員(文部省研究員)、55年帝京大学薬学部就任とともに、熊本大学医学部講師・東京大学薬学部講師・京都大学薬学部講師など歴任後、平成3年帝京大学教授就任現在に至る。

その他/日本癌学会誌「Jpn J.Cancer Res.」論文審査員、日本学校保険委員日本薬学誌「J.Parmaco Dyn.」編集委員、日本比較免疫学会役員、日本資質栄養学会役員、日本生体防御学会委員、厚生省薬剤師国家試験出題委員、日本健康・栄養協会学術専門委員、ヒューマンサイエンス振興財団評価専門家委員、東京大学大学院講師など歴任。

著書/「食品と生体防御」「がん抑制の食品」「生体防御の機構」「サイトカイン」など50冊及び学術論文205編など。

 

 

 

医学博士 塚本昭治郎先生
日本大学医学部 主任教授

 

研究/基礎と臨床の両方の医学にまたがった総合医学の研究で、生物科学分野における、アルコール代謝、肝硬変症の脂肪酸構成、脳腫癌血管増生因子の分離・アルコールの脳・肝機能への影響と予防など。


環境ホルモンで大きな影響を受けている社会生活

現在、我々の健康を考える上で大きなテーマの一つに環境問題があります。今や人間がつくり出した科学物質に環境は支配されようとしています。

たとえば、便利で身の回りにあるプラスチック食器あるいはサランラップのようなものの使用方法で熱を加えると、化学物質が遊離して、これらに含まれるビスフェノールA又はノニルフェノール等は、魚類や鳥類に対してメス化現象をひき起こさせてしまいます。 人においても男子の精子を半減させてしまいます。これらの化学物質は生物のホルモン系(内分泌)を狂わせてしまう、内分泌かく乱物質となり、環境ホルモンと呼ばれています。 これらは、ごく微量でホルモン系に作用してしまい、今や”人は子孫を残せるか”といった話題とともに、人自身の健康が危惧されています。

 

ダイオキシンは生態に影響を与えている

また、ごみの焼却などで発生するダイオキシンも問題になっており、これは非常に毒性が強く危険な環境汚染物質となっています。ダイオキシンは人工的に作ったものを燃焼させると発生し、周辺に蓄積していきます。世界保健機関は、許容摂取量を人1kgあたり1~4ピコグラムと定めていますが、平成8年の母乳中のダイオキシンは脂肪1gあたり16.3ピコグラムもあり乳幼児にあたえる影響は非常に大きいことが分かります。

 

ライフスタイルも要注意

女性の間で、キッチンドリンカーが増えているそうですが、女性は男性に比べて、アルコール依存症や肝障害を起こしやすいので要注意だといえます。又、妊娠中の女性が妊娠3ヶ月頃にお酒を飲むと、ビール1本程度でも胎児に悪い影響を与えます。

注目すべきは、胎児の脳の発育が悪くなり、その胎児の一生に影響を与えます。

 

予防医学の知識と実践が身を守る

このように、環境ホルモン、ダイオキシン、ライフスタイルなどのすべてが我々の健康に重大な影響を与えます。

そこで、現在の我々の食生活は健康上、非常に重要な問題であり、生体が自分で自身を守っていくための必要な成分(食品・栄養成分)が十分に摂取されているかどうかは、大切になってきます。

これからは、健康を保持するための知識(予防医学)を身につけて自分で自分の健康を守ることが大切になってきます。

 

概略プロフィール

昭和41年日本大学理学部薬学科卒業/ヘルシンキ国立アルコール研究所留学。その後、日本大学医学部助手、専任講師など歴任、49年医学博士、57年同大学医学部助教授、59年同大学医学部・総合医学研究所生物科学部門科長として、薬学と医学及び基礎と臨床の両方にまたがる研究を推進する。日本大学薬学部総合科学研究所主任教授歴任後、同大学医学部社会医学系法医学講師として現在に至る。

その他/日本アルコール薬物医学会理事、日本法医学会評議員など歴任。又、日本法・中毒学会、日本毒・科学会、日本中毒学会など所属。著書/「アルコール代謝」「向精神薬の血中濃度測定法」など多数。

 

 

 

医学博士 佐藤喜宣先生
杏林大学医学部 名誉教授

 

研究/法医学全般にわたる研究で、多発する乳幼児及び成人の突然死、薬物乱用の現状と対策、AIDSの感染防止、アルコール、薬物と遺伝、DNA検査の法医・法科学の応用、脳死と臓器移植、大災害時の法医・法科学など。


21世紀の医学目標は対症療法から予防医学へ

21世紀の医学目標は、いかに健康で快適な生活を人々に提供できるかにかかっていて、従来の医療(対症療法)から、予防医学に重点が置かれています。

つまり、日常の生活の中で日々健康を維持して、病気にかかり難い生活習慣やライフスタイルをいかに大切にしていくかということになります。

しかし、“健康な長寿は、一人ひとりの健康に対する知識と努力が大切”で、国の政策を待っていては、どうしても手にすることは出来ませんので、民間や個人の自発的啓蒙運動が最も重要となるでしょう。

 

突然死の多くが食生活とライフスタイル

法医学の立場から、自殺や外因子(事故など)を除く成人の突然死を見ると、3大死因は心疾患(心不全)、脳血管障害(脳卒中)、アルコール性肝障害の順です。

いずれも食生活に問題があったり、喫煙や飲酒などのライフスタイルに加え、環境ストレスなどが主な原因とみられます。

 

知識は健康の第一歩

突然死した人々の生活史を調べていくと、全般的に健康に関する知識が乏しく、食事や栄養に対して、無頓着であった人が多く、逆に高ビタミン食や高蛋白質などを摂取している人は当然のことながら、栄養に関する知識が豊富で突然死がほとんど見られないという結果が得られています。

このことは、日々の栄養のバランスこそが、人間の健康を左右する最も重要な鍵であることを、裏づけているものと考えられます。

 

大切な予防医学とそのネットワーク

そこで、個々の家庭で今できることは、”栄養のバランスによる自己管理”と言えるのではないでしょうか。栄養バランスによる自己管理とは、正しく予防医学的な知識を持つ専門家のアドバイスと、”優良な栄養バランス食品”の双方が必要となってきます。

したがって、生活者は専門家や優良な栄養バランス食品の提供者との円滑な知識・情報ネットワークを構築する必要があります。このネットワークがつくられるとともに理想的な予防医学の実践が可能になり、身近なものとなってくると確信します。ヘルバ予防医学研究会の基本テーマは、真に上記のネットワークを包括するもので我が国における先駆者的存在になるものと考えられます。

 

概略プロフィール

昭和50年日本大学医学部卒業/54年同大学院卒業・医学博士その後、イタリア政府留学生としてローマ大学法医学研究所に留学。57年琉球大学医学部助教授就任とともに、日本大学医学部講師・東京都監察医務院医長監察医、杏林大学医学部講師など歴任後、62年杏林大学医学部主任教授として現在に至る。

その他/日本大学医学部講師、日本医科大学講師、警視庁法医鑑識医、東京都観察医務院監察医、明治学院大学法学部講師、厚生省進審議会委員、日本法医学会評議員、日本アルコール・薬物医学会理事、日本交通科学協議会評議員など歴任、又、日本病理学会、日本中毒学会、日本生命倫理学会、TIAFT(国際法医・法科学学会)など所属。テレビ番組のコメンテーターとしても活躍中。書著/「臨床のための法医学」「法医学の試験問題と解説」など多数。